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今回の号では、オーストラリアにおける大学レベルの日本語教 育に関する研究を特集する。本稿では、まず、日本語教育の歴 史的背景と日本語応用言語学研究の現状について概観し、次 に、本特集で取り上げた各論文を紹介する。
オーストラリアの大学における日本語教育は、1960年代に いくつかの大学を中心に始ま旬、1970年代後半までには約半数 の大学で日本語のコースが設けられた。1980年代後半には、日 本語コースを新たに開講する大学の数の増加に伴って、学宵者 の数も著しい伸びを見せ、日本語は外国語の中で最も多く教え られ、また学ばれる言語となった。このような日本語教育の発 展には、日豪間の経済関係が大きな要因として挙げられる。そ の後1990年代に入η、日本経済の停滞に直面して、--> n幸 の''Tsunarni'' と呼ばれたような日本語ブームは下火になっ た。しかし、現在もなお、38大学のほとんどで日本語のコース が開講されるなど、日本語が引き続き、オーストラリアにおい て、主要な外国語の一つであることに変わりはないと言えよ つ。
そんな中、1994年に豪州政府審議会よ旬、1996年から全豪 の小学校にアジア四言語(中国語・日本語・インドネシア語・ 韓国語)の教育を導入することが勧告され、連邦政府と各州教 育省はこれを受けて、2006年までに、3年生から10年生までの 全ての生徒の60%と、12年生の15%がアジア四言語のどれかを 学習するという言語政策をうち立てた。このような初等・中等 教育に対する政府の言語教育計画は、今後、大学における日本 語教育をさらに拡大・発展させることにつながるであろうO
日本語教授法も、従来のオーテ守イオリンガルから、コミュ ニカティブ・アブローチ、シチュヱーショナル・ファンケショ ナル・アブローチなどを基本にした教授法や、インターアクシ ョンを重視したシラパスが導入されるなど、コミュニケーショ ン能力の養成が主眼におかれるようになってきた。また、ここ 数年、コンビュータやサテライトを駆使したプログラムを開発 し授業に活かしている大学も増え続け、二十一世紀へ向けて、 日本語教育におけるマルチメディアの利用も、着実に進歩を遂 げつつある。
現在、オーストラリアにおける大多数の大学で日本語応用 言語学の研究がなされており、日本語教育関係者は日々研績を 積んでいる。その研究内容も様々な分野に及び、JSMやALAA などの大会が、それらの研究の発表の場となっている。教材や 教授法を開発するためにも、そして、より効果的な授業をする ためにも、研究は欠かせないものであり、また、研究の成果を 実際の教育の場に反映させることは、今後ますます重要になっ てくるであろう。
今回の特集には、言語使用・言語習得・学習ストラテジー・ 教育環境・「文化」の捉え方・教師の言語的知覚など、実に多 岐にわたる論文が寄せられた。いずれも、日本語教育関係者が 忙しい授業の合間をぬってまとめたものであ旬、これら日頃の 研究の成果が、オーストラリアでの日本語応用言語学の発展に 貢献することを願ってやまない。